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INTERVIEWアーティストたち
畏敬の念を感じさせつつ、どこかとぼけた“いきもの”たち ― 「工房火の玉発動機」工房長 田崎太郎氏
DATE:2019.11.25
NAME:オリベル
クリっとした目に丸みのあるフォルム、とぼけた表情が愛らしくも、描かれた文様や細部をまじまじと眺めていると、なんだか畏敬の念も感じるような…唯一無二の世界観を持つ田崎さんの作品は、2012年の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や日本最大のアートの見本市「アートフェア東京」、銀座三越などに出展され、現代アートとしての評価も高く、展示会をすれば完売する人気ぶりだ。展示会で出品する作品は全て手びねりで一品もの。人間の文明を寓意的に表現した『ペンギン種族』、狛犬からヒントを得たオリジナル作品の『仔猫神』や『龍神』など、自身は「工房火の玉発動機」の工房長として、そんな不思議な“いきもの”たちに日々命を吹き込んでいる。
田崎さんは福岡県出身。小さな頃から芸術が好きだったという。高校生の頃に一度は芸術を諦めるも、神奈川でサラリーマンをやりながら独学で公募展に出した作品が入選。30歳を前に自分のやりたいことをやろうと28歳で会社を辞め、陶芸家の道へと進んだ。
「脱サラして沖縄に行った時に、シーサーを作っている陶芸家たちがとても楽しそうだったんです。自分もそんな風に生きたいと思いました。」
東京に近く、市場があり、自由な風潮であるという理由から、修行の地に笠間を選んだ。初めは窯元に入り、30歳で独立。後の【メカオブジェ】シリーズなどは、最初は全く売れなかったが、売れる作品より自分が作りたい物を、という想いで制作し続けていた。転機となったのは独立して7年後の2008年。陶芸雑誌で大きく特集を組まれたことで、作家として認められ、地位が確立したと感じたという。
― 主人公は南極に住むペンギンたち。環境破壊が進み、オゾン層の穴が広がり、ペンギンたちは南極に住み続けられなくなってしまった。そこで12種族いるペンギンたちは新しい国を見つけるために北上を始める。旅を続けながら、ペンギンたちは知能や技術を身につけ、モノを作ることに目覚める。銅を武器に、鉄を刀に、飛行機は旅客機から戦闘機に、船は客船から軍艦に、そうやって文明を築いていく。まるで人間がそうだったように。ペンギンたちの旅はまだまだ終わらず、ストーリーはずっと続いている。旅の途中で出会った龍神や狛犬も、また別のストーリーへと広がっていく。 ―
ペンギンたちの理想の国を目指す旅を主軸に、田崎さんの作品一つ一つには全てストーリーがある。中には文明が発達することで生まれる矛盾や、時代を風刺するものもある。田﨑さんの作品の特徴は、そんな「意味深さ」を内包しつつ、ストーリーに盛り込まれたプッと笑えるユーモアと、なんといっても作品の可愛らしさだ。
「“買われていく”というよりも“ご主人様のところで、魔除けや福を招く任務に就く”という感じ。」
そう語る田崎さん自身も、作品を撮影するファインダー越しに、ドキッとする瞬間があるのだとか。
作品に描かる不思議な文様のルーツは古代文明から。子どもの頃からマヤ文明やインカ文明、古代エジプト、古代日本史などが大好きだった。それは作品の文様だけでなく、その形やストーリーにも影響している。
「陶器は何千年も残るでしょ。いつか今の文明が終わった後に、自分の作品が発掘されていることを想像するんです。自分のお客さんのところでも発見されるから、未来の考古学者が王国があったのではないかと考えたりね。未来の博物館で展覧会が開かれたらと想像すると、面白いよね。」
笠間市が台湾との友好関係を結ぶ中、台湾での展示会も決まり、田崎作品の海外進出が目前に控えている。世界中の人に、作品のストーリーも届けたいという。
「ペンギンの12種族が色んな方向から北上して、龍神様や狛犬など色々なスピンオフの物語があって、いずれ全てが北極点で集合するんです。どんなに面白い結末にまとまるのか…まだ分かりませんけどね。」
田崎作品のストーリーはまだまだ、続いていく…
田崎作品の物語は、Facebookでも覗いてみてね。
https://www.facebook.com/tarou.tasaki.9
●ホームページ
https://hinotamaworks.jimdofree.com/
●メールアドレス
hinotamahinotamataro@yahoo.co.jp
※工房の一般公開はしていません。