正月や春・秋のイベント時期にはたくさんの観光客で賑わう笠間稲荷門前通り。この場所で長らく商売をするそば店「柏屋」に足を運んだ。
創業90年ともなると、店が醸し出す雰囲気は何か違う。天井付近に飾られている年季の入った奉納額、お皿などの食器類がしまわれているガラス棚の模様、ひと際存在感を放つ大きなかけ時計。昭和5年建築されたという店舗は見るだけでも価値があるようなワクワクした気持ちに襲われる。
今回インタビューした沼田さんは4代目店主。大学を卒業後、実家が営むそば屋で修行をはじめた。店に立つようになった20代前半の頃のこんなエピソードを語ってくれた。
「当時はこのあたりで手打ちでそばをやる店がなかったんですよ。父の発案で『見せる店づくりをしよう』と、入り口脇にガラス張りのスペースを作って、そこでそばを打つことになって。25歳くらいの時だったかな、お客さんが見てると思うと手が震えてしまって。失敗しないようにゆっくりとしたぎこちない動きになってしまいました。汗もかいてたでしょうね、あの時のことは今でもよく覚えています。」
店前を通るお客へのアピールと活気づけのアイデアであったろうが、厨房にこもって黙々と作業するのと、お客さんに見られながら作るというのはこうも違うのかと思ったそう。手打ちそばのパフォーマンスに、人々の食い入るような視線が緊張となって現れた瞬間であった。
手打ちそばの師匠である父親からは「心を込めて」という教えだったが、職人の世界は言葉で教わるよりも自分で経験を積み、感覚を養うことが重要。自分の中で納得するものが作れるようになるには、やはり時間がかかる。1日でも多く経験を積めるようにと、一度作ったそばをばらし、また一から作る、という努力も惜しまなかった。視線を気にせず自信を持ってそばを打つようになったのは20代後半になってからだという。
「自分でも手際が良くなってきたと感じるようになりました。感覚が身に付くと季節によって変わる水の加減とか、コツがわかってくるんです。実践を積むことが大事ですね。」
店前を通るお客へのアピールと活気づけのアイデアであったろうが、厨房にこもって黙々と作業するのと、お客さんに見られながら作るというのはこうも違うのかと思ったそう。手打ちそばのパフォーマンスに、人々の食い入るような視線が緊張となって現れた瞬間であった。
手打ちそばの師匠である父親からは「心を込めて」という教えだったが、職人の世界は言葉で教わるよりも自分で経験を積み、感覚を養うことが重要。自分の中で納得するものが作れるようになるには、やはり時間がかかる。1日でも多く経験を積めるようにと、一度作ったそばをばらし、また一から作る、という努力も惜しまなかった。視線を気にせず自信を持ってそばを打つようになったのは20代後半になってからだという。
「自分でも手際が良くなってきたと感じるようになりました。感覚が身に付くと季節によって変わる水の加減とか、コツがわかってくるんです。実践を積むことが大事ですね。」
柏屋の創業は明治35年頃。当時は商人が休憩する茶屋のような店であり、丼物などを提供していたが、本格的なそば屋になったのは沼田さんの父親の代から。老舗と聞くと代々続く味であったり、ずっと守ってきたポリシーのようなものがあるイメージを抱くが、そのことについては沼田さんはこう話す。
「味もそうかもしれないけれど、それよりも店主の想いや気持ちで老舗というのは守られている。それぞれカラーがあっていいと思うんです。」
大事なものは守りつつ、時代と共に変化する客層やニーズに合わせて柔軟にサービスしていく事が必要ということだろう。
「約20年前まではコンビニや娯楽施設も少なく、お客さんも笠間の1か所のために観光にやって来たので、正月や菊祭りの頃は大変忙しかったですね。今の門前通りは、立ち寄りスポットとして認知されていて、神社の参拝後に昼食を楽しんだら移動して他の目的地へ移動する、そういう過ごし方をする人が増えたように思います。」
近年10年ほどの間に門前通りの客層、滞在スタイルも変わってきた。女性や外国人観光客が増え、交通網などの利便性が向上したこともあり、一点集中型のメイン観光地というよりは、立ち寄り観光地として変化してきているそうだ。
「味もそうかもしれないけれど、それよりも店主の想いや気持ちで老舗というのは守られている。それぞれカラーがあっていいと思うんです。」
大事なものは守りつつ、時代と共に変化する客層やニーズに合わせて柔軟にサービスしていく事が必要ということだろう。
「約20年前まではコンビニや娯楽施設も少なく、お客さんも笠間の1か所のために観光にやって来たので、正月や菊祭りの頃は大変忙しかったですね。今の門前通りは、立ち寄りスポットとして認知されていて、神社の参拝後に昼食を楽しんだら移動して他の目的地へ移動する、そういう過ごし方をする人が増えたように思います。」
近年10年ほどの間に門前通りの客層、滞在スタイルも変わってきた。女性や外国人観光客が増え、交通網などの利便性が向上したこともあり、一点集中型のメイン観光地というよりは、立ち寄り観光地として変化してきているそうだ。
沼田さんは笠間稲荷門前通り商店街の理事長と、笠間のまちと通りのこれからをみんなで考える会「かさまち考」の長を務めている。その中で笠間稲荷神社を含めた連携や、近隣地区との協力の下で、賑わいをどう作っていくかという勉強会を行っているという。
「市外の人から、ここで商売をやりたいという声を聞くことがあります。理由を聞くと、『とても魅力がある街なんだよ』と教えてくれるのですが、住んでいる側の人間は景色風景を毎日見ていますから、それ以上の閃きがなかなか出ないんですよ。他から来る方には魅力が見えるんでしょうね。それに、地元の人と話しても現状で満足している人は誰一人いなくて。みんな1人でも多くお客さんが絶えない街にしたいと思っているんです。しかし1人の力ではできないことなので、商店主や新しい事業主の方、行政の方と今の言葉でいう“ONE TEAM”になって動いていこうという志でやっています。」
「市外の人から、ここで商売をやりたいという声を聞くことがあります。理由を聞くと、『とても魅力がある街なんだよ』と教えてくれるのですが、住んでいる側の人間は景色風景を毎日見ていますから、それ以上の閃きがなかなか出ないんですよ。他から来る方には魅力が見えるんでしょうね。それに、地元の人と話しても現状で満足している人は誰一人いなくて。みんな1人でも多くお客さんが絶えない街にしたいと思っているんです。しかし1人の力ではできないことなので、商店主や新しい事業主の方、行政の方と今の言葉でいう“ONE TEAM”になって動いていこうという志でやっています。」
笠間稲荷神社や笠間焼は、笠間に暮らす芸術家や商店主などたくさんの人々の強い地元愛で守り続けてきたもの。人の手によって守られてきたからこそ、その価値に気づき、観光資源として根付いた。だから訪れる人には街のファンになってもらいたいと、沼田さんが力を入れていることがある。
「気遣いよりも心遣いを大切にしたいと思っています。店を出るまでお見送り、小さいお子さんへの配慮、時刻表を見てあげたり、バス停やタクシーの送迎手配など、ちょっとしたことでもお客さんに寄り添う対応を心掛けるようにしています。お客さんに『また来るよ』と言ってもらえるようなことをできるかできないか、だと思いますね。皆さんがそんな気持ちでできたら、笠間のどこへ行ってもそういうおもてなしが受けられる。人の魅力で勝る街になった方がいい。」
今後門前通りでは、キャッシュレス対応や外国語対応、トイレのある場所をわかりやすくするなど、外国人観光客や子ども、お年寄りにもやさしい街づくりが期待されている。当たり前のようにあるベンチも、実は人のやさしい心が生み出したもの。散策の合間に休憩したり、調べものをしたりと、ベンチは何かとありがたいものだ。
「些細なことでも人の温かさ・やさしさがにじみ出ているような街になっていけるように頑張りたいです。」
手打ちそば 柏屋
笠間市笠間1273
10:00~17:00(16:00頃終了の場合有)
不定休
「気遣いよりも心遣いを大切にしたいと思っています。店を出るまでお見送り、小さいお子さんへの配慮、時刻表を見てあげたり、バス停やタクシーの送迎手配など、ちょっとしたことでもお客さんに寄り添う対応を心掛けるようにしています。お客さんに『また来るよ』と言ってもらえるようなことをできるかできないか、だと思いますね。皆さんがそんな気持ちでできたら、笠間のどこへ行ってもそういうおもてなしが受けられる。人の魅力で勝る街になった方がいい。」
今後門前通りでは、キャッシュレス対応や外国語対応、トイレのある場所をわかりやすくするなど、外国人観光客や子ども、お年寄りにもやさしい街づくりが期待されている。当たり前のようにあるベンチも、実は人のやさしい心が生み出したもの。散策の合間に休憩したり、調べものをしたりと、ベンチは何かとありがたいものだ。
「些細なことでも人の温かさ・やさしさがにじみ出ているような街になっていけるように頑張りたいです。」
手打ちそば 柏屋
笠間市笠間1273
10:00~17:00(16:00頃終了の場合有)
不定休
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