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みんなに「美味しい」と言ってもらえるのが、何よりも嬉しい ― 田村きのこ園 田村仁久郎さん

DATE:2019.11.28

NAME:オリベル

大きくて肉厚なカサに、太いジク。瑞々しくて、ずっしり重い。田村仁久郎(じんくろう)さんの作る「ジャンボしいたけ」を初めて見た人は皆驚く。
「こんなシイタケ初めて見た!」

「まずは食べてみて。食べてみないと分からないから。」
笑顔が優しい田村さんご夫妻の勧めで、目の前のストーブに大きなシイタケを並べていく。しばらくすると、白くて綺麗なヒダに水の玉がつき始め、部屋中にいい香りがたちこめる。
「まずはカサを塩で食べてみて。」
塩をふった肉厚のカサを口に含むと、じゅわっとシイタケの香りが口いっぱいに広がる。柔らかくもしっかりした食感があり、一口ごとに水分が溢れる。そこで皆、2度驚くのだ。
「こんなシイタケ初めて食べた!」

カサを楽しんだら、ジクの部分を手で割いてまたストーブで焼く。ジクは醤油で食べるのがオススメだ。噛むほどに更に濃い香りと味が広がっていく。

笠間市福原。生まれ育ったこの場所で、田村さんがシイタケ作りを始めたのは60年以上前。高校を卒業してすぐの頃だそうだ。当時は戦後で、植林した雑木が溢れていた。ガス燃料が広がり、薪も売れない。そこで始めたのがシイタケの栽培だった。
「親を戦争で亡くして、自分で生きていくしかなかった。」
当時は生産者が少なく貴重品だったシイタケ。教えてくれる人が誰もいない中で試行錯誤しながら始めた。10年後には北海道へ4日かけて生シイタケを出荷するまでになった。昭和60年には昭和天皇へ献上し、平成5年には農林水産大臣賞を受賞している。豪華寝台列車「TRAIN SUITE 四季島」の料理長に見染められ、旅を彩る料理にも使われている。

驚きは「ジャンボしいたけ」だけではない。「宝珠茸」は、カサを開く前の旨味が凝縮した全てがジクのような唯一無二のシイタケ。希少なこのシイタケは、東京の高級レストランでも使われている。ブランド価値の上がる田村きのこ園のシイタケだが、ただ「美味しい」と褒めてもらえるのが嬉しいと、仁久郎さんは笑う。通常サイズのシイタケは「仁久郎きのこ」の名前でスーパーにも並ぶ。
原木で始めたシイタケ作りだが、重い原木を運ぶよりも自身の身体のことを考え、60代後半からは菌床での栽培を始めた。変わらず大きくて美味しいシイタケを作り続けるため、日々研究の毎日だ。地下からの湿度が肝心だというシイタケ栽培。一つ一つ人の手をかけ、今でも大きいシイタケができるのが楽しいし、どんどんできるシイタケが可愛いと言う。
シイタケの出荷は9月頃~5月頃。夏の間は米作りもしている。年中休みなく働き詰めだ。たくさん苦労をしてきたが、一つ一つ夢を叶えてきた。一生懸命作り続けるうちに、シイタケの方が一人歩きしていた。お歳暮などでもらった人から直接電話があったり、アメリカ大使館の人やシンガポールの観光客がきのこ狩りに来たり、田村さんのシイタケは全国へそして世界へ広がっていく。
80歳になり、やりたいことはまだまだいっぱいあると言う。一度は断念したが、「他にはない美味しいハナビラダケを作ること」もその一つ。気さくに笑う仁久郎さんと、横で優しく支える奥さん。これからも夫婦仲良く、夢を追い続ける。
田村きのこ園
茨城県笠間市福原1605
tel. 0296-74-2244
シイタケの直売の他、電話予約をすればきのこ狩りもできる。(団体不可)田村きのこ園のシイタケをふんだんに使った料理が味わえる息子さんが営む「きのこ亭」(茨城県桜川市上野原地新田308-3)も是非訪れたい。

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