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笠間は多様性の街。笠間ならではの「アルベルゴ・ディフーゾ」を目指して。 ― 農家民泊「黒澤永之亟(えいのじょう)」柴沼 淳氏/NPO法人「笠間の魅力発信隊」大坪 桂氏

DATE:2019.11.13

NAME:オリベル

農家民泊「黒澤永之亟(えいのじょう)」を営む柴沼 淳氏と、NPO法人「笠間の魅力発信隊」の大坪 桂氏。少し肌寒さを感じ始める10月末の午後、黒澤永之亟の囲炉裏の火を囲みながら、民泊の今とこれからについて語ってもらった。柴沼さんが出してくれたお茶は、台湾の人にもらったという美味しい中国茶。お茶請けは黒澤永之亟の栗畑で採れた大きな栗だ。

黒澤永之亟は笠間市池野辺ののどかな場所にある。「住むには不便…」と言う築90年以上の民家は、元々は柴沼さんの母親の実家だったそう。広い土間に上り下りの多い動線、昔ながらの農家の家。そんな民家が減っていく中、ここに宿泊ができるのは貴重な体験かもしれない。日本の若い世代には、おばあちゃんちに遊びに来たような懐かしさを。年配の人たちにとっては幼少期を過ごした郷愁を。そして、外国の人たちには映画の中に入り込んだような憧れを感じさせる。国籍や世代によって感じ方は違えど、訪れる人の心に必ずある不思議な場所だ。

「この界隈は、夜は人間の住む世界じゃなくなるんだよ。獣の世界になってしまうんだ。」

動物たちの気配に支配される夜の静けさも、人間社会に慣れきってしまった私たちには、なかなか知りえない。食べるものも釣った魚に採れたての農作物。自分たちで手に入れるところから体験できる。そんな「本物感」を楽しませてくれるのが、ここの民泊だ。

― 笠間で大坪さんがNPOを立ち上げた時期と柴沼さんが民泊を始めた時期はだいたい同じ。これまでのお二人の経緯は?


●大坪   中学校の教員を定年退職し、千葉から茨城に来て4年。元々田舎や自然が好きで、地方が元気になることをやりたいと思っていました。教え子たちを長野の農家体験に連れて行ったときに、生徒たちがすごく喜んで、最後の日には農家の方々と泣いてお別れするなんてことがありました。それが笠間にないのはもったいない。そこで、2016年からはじめたのが千葉や東京の子どもたちを対象にした「教育旅行」です。ここには都会にないものがある。民家のお年寄りも、子どもたちにエネルギーをもらったと喜んでくれます。笠間を選んだのは、アクセスの良さが大きいかな。子どもたちも来やすいしね。

●柴沼   交通の便は魅力だよね。うちのお客さんでも、仕事終わってから来る人もいるよ。

●大坪   笠間のアクセスの良さは日帰りで楽しめる魅力でもあり、対して宿泊客が少ない弱さでもある。そこで「民泊」なんです。イベントや体験とセットにして笠間の観光プランにしてるんです。日本の観光産業は、特に可能性のある分野だと思いますよ。

●柴沼   私は15年間、台湾で過ごしたんです。台湾の人って、年に4回も5回も日本へ旅行するもんで、王道の観光地は行き尽くしてくるんだよね。だからだんだんと、旅行でこういう日本の田舎体験をやりたいという需要が増えてきたんだよ。台湾人だけでなく、そういった外国人観光客は増えると思うよね。空家だった母の実家に、15年間で培った中国語。そして、田舎体験へのニーズ。台湾でのサラリーマン生活を捨てて、笠間で民泊を始める準備が整ったよね。大坪さんとは、民泊を始めてすぐに連絡して、それからの付き合い。
― イタリアの「アルベルゴ・ディフーゾ」という考え方


●大坪   イタリアの小さな村では、空家をそれぞれレストランや宿泊所にして、村全体を"ホテル"と考える「アルベルゴ・ディフーゾ」というものがあります。単体経営なのと、200m以内という範囲の狭さで、笠間で実現するのは難しいですが、近い形で理想に近づけることはできると思います。「アルベルゴ・ディフーゾ」の考え方は「暮らすように旅をする」。民泊は笠間の可能性です。

●柴沼   10月の始めから3週間くらい、ニューヨークに住むおばあさんがうちに滞在していたんです。何もしないで、縁側に座って外を見てんだ。夜になると、月を眺める。そういう楽しみ方があって、そういうのが大事なんだって思ったよ。ここって、ニューヨークとは対極の場所だと思うからさ。

●大坪   日本の人にだってそう。のどかな時間が一番の贅沢なんです。ほっとする景色、雰囲気、空間、ライフスタイル。求められいるのはそこだと思います。例えば、笠間の直売所「みどりの風」で、旬な野菜を見つけて、そこから今晩のおかずを考える暮し。都会の整然としたスーパーマーケットでは起こらないことです。そういう豊かさが大事だと思うなぁ。

●柴沼   春先に畑で採れたレタスをサラダにして出したら、お客さんが新鮮で美味しいって感動してくれてさ。水が滴るような採れたての椎茸をここの囲炉裏でそのまま焼いて食べたりとかね。採れたばかりのものを口にするって、都会の人にはなかなかできないことかもしれないね。ここでの暮らしって全ての動作が「食べること」に繋がってんだ。生き方がシンプルなんだ。
― 笠間は「多様性=ダイバーシティ」の街。面白い人たちが多い。


●大坪   笠間の売りは「多様性」だと思います。笠間焼がそうでしょう。決まった形がない。笠間の人たちもそう。柴沼さんみたいに茨城弁の強い地の人もいれば、外からやってきた人や外国人も多い。色々なものが入り混じった不思議な街です。本当に、豪快で面白い人がいーっぱいいますよ。教育旅行の中学生の受け入れに協力してくれる民家の人たちも、みんなオープンで楽しい人ばかりです。
― これからの展望は?

●大坪   NPO法人としての持続可能な事業化ですね。持続しないことには意味がありませんから。民泊のネットワークを作りながら、NPO法人としての民泊
経営もしていきたいですね。これからは地方の時代です。地方が元気になれば、日本が元気になる。地方の課題をプラスにしていきたいですね。

●柴沼   私の次の目標は、女性のお客さんにもっと来てもらうこと。女性の拡散力で、ここで楽しむことを目的として来てくれる人が増えると嬉しいね。「何もない」ことが、都会では味わえない貴重な売りだからさ。

●大坪   みんなが求めている豊かさが笠間の民泊にはあると思います。それぞれに個性があって、クオリティが高い。知れば絶対大好きになるから、PRのしがいがあります。笠間ならではの「アルベルゴ・ディフーゾ像」を実現したいですね。

●柴沼   大坪さんはネットワークをまとめる立場。私は、この土地が代々続いていくようにしていきたいよね。

●大坪   アジアからの旅行客はもちろん、ヨーロッパからバカンスに来る人も増えるといいよね。「バカンス」とは元々「心を真空にする」「何もしない」という意味。まさにここで体現できることだと思います。

●柴沼   さっき話したニューヨークから来たおばあさんが、帰るときに言ったんだ。「私が日本に来るのは、今回が最後です。」って。最後の滞在に、黒澤永之亟を選んでくれた。そんな場所を提供できるって、本当に嬉しいことなんだよね。




農家民泊「黒澤永之亟(えいのじょう)」
築90年の民家に泊まる。野菜の収穫や、採れた食材の調理も楽しい。ここでしかできない、その時しか味わえないオンリーワンの体験が待っています。
茨城県笠間市池野辺1633-1
tel. 070-3964-0735

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